馬の話を聞く

琉球新報社提供 「落ち穂」06 2019.4.5掲載 馬の耳はよく動く。動き方や角度には、それぞれ意味がある。たとえば、ゆるく開いていたらくつろいでいる。ピンと立っていたらなにかを警戒中。絞るように後ろへ寝かせていたら怒っている。 耳を見れば馬の気持ちがわかる。そう気づいた時には、頭の中で電灯がぴかぴか光ったように感じた。すごい手がかりを得た気分になった。 犬がしっぽをぶんぶん振ったら喜んでいる。 […]

見いだす回路

琉球新報社提供 「落ち穂」05 2019.3.21掲載 遠くの丘に、ちらっと動く小さな影が見えた。馬だろうか。気持ちがぴょんと飛び跳ねる。やはり馬だ。嬉しさがこみあげる。ふだんぼんやり過ごしているし、視力もよくない私だが、馬に対してだけはいつでも瞬時に反応する。深い集中が起こる。あれはどういう脳の働きなのか。 私の場合は馬だけれど、鳥が好きな人は鳥を、花が好きな人は花を、無数の要素があふれる世界か […]

本と小さな生き物

琉球新報社提供 「落ち穂」04 2019.3.5掲載 カディブックスの本は一冊ずつ透明な袋に入れて封をしている。書店に並べられている一般的な新刊はそうしていないことが多い。封入する場合にはなにがしかの理由がある。カディブックスの場合もやはり理由がある。 ひとつは本を落ち着かせるため。カバーを手折りで付けると機械で作るようにピシッとならない。なんとなくふんわりしている。それを透明な袋にきちんと収める […]

長い旅をする本

琉球新報社提供 「落ち穂」03 2019.2.15掲載 朝起きると天気予報を見る。雨は降るか。風は強いか。波は高いか。台風の動きには特に注目する。 外に出て馬の世話をしながら空を見る。どんな雲があるか。どのくらいの速さで動いているか。風を肌で感じる。方角と風圧を確かめる。 天気が気になるのは、野天で暮らす馬のため。そして本の発送に関わるからだ。 与那国島では天気が悪いと飛行機や船が欠航になる。台風 […]

手触りとゆらぎ

琉球新報社提供 「落ち穂」02 2019.1.30掲載 紙の束から指の感覚で厚みを計り、このくらいと感じる量を手に取る。枚数を数えてみると欲しかった量とぴたり。その後に続く作業についても同じで、頭で考えなくとも、手順、力加減、動きのリズムがもう体に刻まれている。ただ無心に紙を折り続ける。 折っているのは本のカバーだ。カディブックスの本は、中身をオンデマンド印刷で作り、別に刷ったカバーを手作業でつけ […]